人口とお金の話は、そんなに単純じゃないと感じている
人口が減れば、自治体の予算も小さくなる。
たしかに、そう言われると納得してしまう。
でも那須烏山市で暮らしていると、その説明だけでは足りない気がする場面が多い。
国道294号は南北に、国道293号は東西に伸びていて、人が減ったからといって道路の距離が短くなるわけではない。
JR烏山線の烏山駅や滝駅に立っても、ホームや跨線橋は、人口の増減とは関係なくそこにあり続けている。
こうした当たり前の風景を前にすると、人口減少と財政規模の関係は、もっと複雑なんじゃないかと思えてくる。
このページでは、その違和感をそのままにして、いくつかの疑問を順番に考えていく。
このページで考えたいこと
ここで扱うのは、次のような問い。
1
人口が減ると、那須烏山市の財政規模は実際どれくらい変わるのか
2
財政の中で、影響が出やすい収入はどこなのか
3
周辺の市町村と比べたとき、那須烏山市はどんな立ち位置にあるのか
4
人口規模が近い宮城県美里町や長崎県壱岐市と比べると、何が見えてくるのか
最初から答えを決めにいくのではなく、途中経過を大事にしながら整理していく。
まずは那須烏山市の今を、ざっくり確認する
那須烏山市の人口は、およそ2万3千人。
ここ数年を振り返ると、ゆっくりではあるけれど、減少が続いているのは間違いない。
一方で、一般会計の規模を見ると、年によってばらつきがある。
決算の数字を眺めていると、歳入が140億円前後になる年もあり、財源が一つに偏っていないことがわかる。
市税だけで成り立っているわけではなく、地方交付税や国からの支出金が大きな割合を占めている。
この時点で、人口と財政規模が単純に比例する関係ではなさそうだ、という感触がある。
ただし、だからといって安心できる話でもない。その理由は後で触れる。
人口減少が財政に影響する道筋を分けて考える
市税は時間差で確実に細っていく
人口が減れば、住民税の納税者が減る。これは避けられない。
さらに、働く場所や商業の厚みが薄くなってくると、固定資産税にも影響が出てくる。
日々の買い物がベイシア烏山店やたいらや烏山店、かましん大金店に集中していくのは、生活としては便利だ。
ただ、その裏で個人商店が閉店していくと、まち全体の空気が少しずつ冷えていく。
そうなると、税の話はまた人口の話に戻ってくる。
住み続ける理由が薄れ、人が減り、税収も減る。この循環はとてもわかりにくい形で進んでいく。
交付税があることで、急激な変化は起きにくい
那須烏山市は、市街地がコンパクトにまとまった自治体ではない。
集落が点在し、道路や水道の維持範囲も広い。
人口が減っても、国道293号や294号沿いのインフラ、橋や側溝、草刈りや除雪といった作業はなくならない。
こうした固定費が大きい自治体では、地方交付税が一定の支えになる。
そのため、人口が減っても、財政規模が一気に縮むとは限らない。
ただし、交付税に頼る割合が高まるほど、自由に使えるお金は減っていく。
数字は維持されていても、選択肢が狭くなる感覚が残る。
大きな事業がある年は、数字がふくらんで見える
学校や公共施設の改修、道路整備など、大きな事業がある年は、歳入も歳出も増える。
国や県からの補助が入り、決算上の規模は大きくなる。
人口が減っているにもかかわらず、財政規模が拡大しているように見える年があるのは、このため。
私は、財政規模という言葉を、自治体の体力というより、その年に動いた事業量として見るようにしている。
周辺市町村と比べて見える那須烏山市の位置
那須烏山市の周囲を見渡すと、人口規模に段差がある。
さくら市は4万人台。
高根沢町は3万人弱。
那珂川町、茂木町、市貝町は1万人前後。
那須烏山市は、その中間に位置している。
この中間という立場には、良い面と難しい面の両方がある。
良い面としては、広域連携がしやすいこと。
ごみ処理や消防、医療、交通などを、周辺自治体と協力して進めやすい。
一方で、単独で維持している施設も多い。
烏山庁舎と南那須庁舎が分かれているように、生活圏が一つにまとまりにくい。
図書館、学校、体育施設、道路網など、守る対象は多いのに、税源の厚みは都市部ほどではない。
余裕はないけれど、役割は軽くない。
那須烏山市は、そういう位置にいると感じている。
人口が近い美里町と壱岐市と比べてみる
那須烏山市、宮城県美里町、長崎県壱岐市は、いずれも人口が2万2千人から2万3千人ほど。[市町村人口ランキング]
人口規模が似ているからこそ、違いが見えやすい。
那須烏山市は、市税と交付税が財政の柱で、交付税の比率が高め。
美里町も似た構造だが、平野部に位置している分、道路やインフラの管理が比較的しやすい印象がある。
壱岐市は、人口が近いにもかかわらず、財政規模が大きく見える年がある。[長崎県壱岐市の人口について]
島であるため、港や空港、道路、水道、医療搬送といったインフラに特有のコストがかかる。
観光資源が豊富でも、その維持には相応の支出が必要になる。
ここから考えられるのは、人口だけで財政は決まらないということ。
那須烏山市は島ではないが、集落の散り方や拠点の分散によって、面的な管理が求められる自治体。
人口が減っていくほど、外部財源への依存は相対的に高まっていく可能性がある。
影響が出やすいのは、目立たないところ
人口減少の影響は、派手な制度変更より、地味なところに先に表れると思っている。
国道294号沿いの歩道や側溝の補修
国道293号の交差点周辺の安全対策
烏山駅周辺の環境整備
龍門の滝へ向かう導線やトイレの維持
山あげ会館の運営や設備の更新
距離や施設の数は変わらないのに、それを支える人数とお金は減っていく。
この割り算は、数字以上に重く感じられる。
財政規模がすぐに縮まなくても、自由に動ける余白が減っていく感覚は、確実に生活の中に出てくる。
あえてまとめ切らずに終える
人口減少によって、市税が細っていく流れは避けられない。
長い目で見れば、那須烏山市の財政の自由度は少しずつ削られていくと思う。
ただし、地方交付税や国の支出金、大きな事業の有無によって、財政規模そのものは年ごとに波が出る。
だから人口減少と財政規模は、単純な比例関係ではない。
周辺市町村との比較、美里町や壱岐市との比較を通して見えてくるのは、
人口よりも、地理条件や行政構造が財政の姿を左右しているということ。
私は今のところ、そう考えている。
結論はまだ出さない。
住んでいると、答えよりも途中の違和感のほうが、ずっと現実に近いから。